自分の技術士口頭試験をふりかえってみる その3:総合技術監理部門(建設―道路)の場合

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最終回は総監.これで一応技術士試験からはエクソダス,ということになります.この年から受験要領が変更になり,口頭試験の時間が最大45分から20分に大幅減になりました.総監は対策が難しいのと,覚えないといけないワードが多いのとでこれまでの試験の中でいちばんきつかったですが,このとき勉強したものは結構今でも自分の中で息づいている,ような気がしています.


試験日と会場

  • 日時:2014/1/12
  • 場所:フォーラムエイト

試験官

  • A:白髪、役人風、基本無表情だが突然ニヤニヤしたりする。
  • B:白髪交じり、役人風、無表情。※基本、Bが仕切っていた。

試験内容

時間きっかりに前の受験者が出てきて、その直後にBが呼びに来た。
私:受験番号とフルネームを告げる

(席に着いたら雑談等無く開始。ちなみに過去2回の内容を読んでいただければわかると思うが,私がこれまで受けてきた中で始めに雑談を挟んだ試しがない。)

B:前半はご自身の経歴について質問します。これまであなたが総合技術監理の視点をどう培ってきたかという視点で、もしくは普段意識しているトレードオフの事例、失敗事例等でも結構ですので経歴を説明してもらえますか。
私:(実際こんなぼやっとした感じで聞かれた。)結局全体を網羅したコメントをした方がよさそうなので、とりあえず5つの管理をどのように身に着けてきたかという視点で経歴を説明し、業務を行う上ではクライアントが求めるレベルの品質確保を最優先に対応することが多くの場合デフォルトなので、コストや人材育成等とのトレードオフを扱うことが多いという説明を3分ほどした。

(両者とも頷くことも無く、メモを取ることも無く、こちらを見ることも無く、ただただ下を向いているという若干異様な光景のもとで説明。)

A:詳述業務について、プロジェクトチームの体制とその中でのあなたの役割について説明して下さい。
私:私以外にシンクタンク数社のジョイントでチームを形成、私がチームリーダーを務めて業務全体をマネジメント。

A:チーム体制について何か懸念事項はありましたか。どう対応しましたか。
私:まず業務着手時にリスクマネジメントを実施したところ、複数企業で対応するため、情報伝達・共有の点がうまく機能せず、進捗管理や品質管理に影響を及ぼすことが懸念された。対応策としては、詳述に記載しているプロジェクトメンバー共有サーバの構築とメーリスを活用した週報の導入による細かいスパンでの進捗チェック。

A:大学院生を外部リソースとして活用することに対して、何かリスクは無かったのですか。どう対応しましたか(なぜか「えーっと、あのー、活用したのは大学院生ですかぁ、ははっ(失笑)」という感じで半笑いで質問された。彼にとって何がツボだったのか分からないが、リスクの大きい学生を使うことは品質確保策になっていないという思いからなのか何なのか)。
私:社内のアルバイトや通常依頼している外注を活用するときと比較して、経験の少ない学生を活用することは作業ミスの発生というリスクが懸念され、そのリスクは当然品質や進捗に悪影響を及ぼすことが想定された。リスクへの対応として、まずは大学に依頼する際にデータハンドリングの慣れた学生を紹介してもらうことでリスク低減を図った。また、依頼した作業はエクセルへの入力・集計であったので、まず自身でセルフチェックができるように関数を組んでもらい、かつ私の方でもその結果を引き取りダブルチェックすることで更なるリスク低減を試みた。

B:交通経済学の知識の有無が品質とコストのトレードオフにどう結び付くのか、補足説明をしてください。
私:産業連関表等の公表されている統計データをもとに、交通経済学の知識を駆使してデータの収集・集計作業を行うことになるため、その分野の知識が無いと作成データの品質が大きく損なわれ、結果的にアウトプット全体の質を下げることになる。ただし、プロジェクトメンバー内に経済学の知識を持った人間が私以外に居らず、私自身は全体のマネジメントやモデル構築の項目を担当する必要があったため、集計作業にまで手が回らない状況であった。よってプロジェクトメンバー内での対応が困難であったためメンバー外に外注という形で依頼することを考えたが、経済学の知識を持っているコンサルタントやシンクタンクに依頼する場合、相応にコストがかかってしまう。本業務は民間発注業務であり予算規模が非常に限定されていたため、一般企業に外注してしまうと赤字が出てしまう状況にあった。よって、両者のトレードオフを検討した結果、学生への依頼ということで対応した。

B:交通経済学の知識というのは具体的にどのレベルのことが求められるのですか。
私:モデルのインプットデータは産業連関表をベースに構築することになるので、産業連関表の読み方や中間投入係数等のパラメータの算出、経済用語の理解(例えば生産額と総生産の違い等)が理解できるレベルが求められた。

B:後半は、総合技術監理の体系的な知識をお持ちかどうか確認します。総監のキーワードの1つに「トレードオフ」がありますが、実務上、実際にはどういうトレードオフが想定されるでしょうか。また、挙げてもらったトレードオフについてはどのような妥協点を見つけていくことが必要とされるでしょうか。ただし、経済性管理はどの事例でもベースになる話なのでそれ以外で例を挙げてください。これは経験談でなく、想定でも結構です。
私:人的資源管理と情報管理。業務の中でルーチンワーク化できる項目については情報管理の視点からマニュアルやフォーマットの作成が効率化策として有効だが、マニュアルに沿えば技術力がない人間でも結果が出せてしまうので、依存しすぎると人材育成の機会を逃すことになる。コストと時間は多少かかっても最初はマニュアルの背景や内容を理解したうえでマニュアルを使いこなすような妥協策が考えられる。

B:・・・すみません、それはどこがトレードオフなのですか?(伝わっていなかった模様)
私:要は、「人的資源開発の機会創出」と「情報管理を行うことによる作業の効率化」がトレードオフになる。

B:わかりました。では他にはトレードオフ事例はないですか?
私:情報管理と安全管理。弊社でもビッグデータ等活用の機会が増えているが、データの細分化により高付加価値なデータが活用できる一方、安全管理の面からは個人情報漏洩というリスクが伴う。よって多少付加価値が落ちるが、安全管理を優先し適当なレベルまで秘匿化や集計化を行う対応を取ることが妥協案になると思う。

A:循環型社会形成というのが重要視されていますが、業務内で気を付けていることはありますか?
私:私が担当してきた道路計画の中で、業務遂行の際に直接的に循環型社会形成だとか社会環境管理を扱うことは少ないが、例えば、業務仕様上求められる話で言うと、モビリティマネジメント関連の業務では交通部門の環境負荷の低減策の提案が求められることがある。一般にモビリティマネジメントは労働集約型の作業になるため、より多くの効果を求めるとそれ相応の人工が必要となる。要はコストと品質のトレードオフが生じるので妥協点を見つけながら提案するという対応を取ることが多い。

A:それは循環型社会と関係があるのでしょうか?あのー、そもそも循環型社会という言葉の定義はご存知でしょうか(ニヤニヤしながら)。
私:いわゆる3Rに代表されるように、資源のリサイクルや再利用といった循環社会形成のための技術を社会システムの中に導入していく取組みだと理解している。(A氏無反応、B氏は頷く)

A:そうであれば、計画の中で本当に循環型社会を取り扱うことは少ないのですか?作ったインフラをうまく利活用するという視点も循環型社会の形成に関わると思いますのでもっと他に計画部門でも関わることがありそうですが(ニヤニヤしながら)。
私:道路設計などでは環境負荷の小さいルート選定の検討があると思うし、インフラの利活用という点では環境負荷の小さい維持管理手法(例えば法面を傷つけない除草方法の提案など)を検討することなどがあると思う。ただしこれまでの私の経験の中ではこの類の業務に携わったことがない。(A氏無反応、B氏は頷く)

A:計画部門で言うと、交通機関分担なども循環型社会とは言えるんじゃないですかね(ニヤニヤしながら)。
私:仰る通り一度作ったインフラを車で賢く使うのか、それともモーダルシフトを推進して公共交通でうまく処理していくのかという視点では最適な機関分担の提案も循環型社会の範疇だと思うし、そういう意味で、冒頭にお話ししたモビリティマネジメントは機関分担の適正化を支援するので、社会環境管理の1つの手法だと思い、例として挙げさせてもらった。

(結局A氏は私が冒頭に例示したMMも循環型社会形成の1つの手法だと語るに落ちた形。何かこの話題は終始A氏と議論がかみ合ってなかった。はじめに私が業務内であんまり意識することがないと言ったのが気に障ったのかも。)

A:業務の中でリスクマネジメントについてはどう行っていますか。
私:リスクマネジメントについては、現在は新規業務開拓を行う部署に属しているため、新規業務への企画提案時に実施することが多い。もちろん通常の業務の着手時にも実施している。いずれも業務を実施する上でどのようなリスクが想定されるかをプロジェクトメンバーで集まりブレストで特定し、発生頻度と評価結果に基づくアセスメントに応じてしかるべき対応策をとっている。

A:しかるべき対応策とは具体的にはどんなものですか。
私:そのリスクの種類によって異なるので一概には言えないが、設備改良の一環で例えばバックアップ機能や代替機能を有するOA機器の導入で解消されるものもあるだろうし、ケースによっては非常時の連絡体制の構築という手段もあり得るのではないか。(もう少し事例を挙げながらうまく答えればよかったと反省)

B:ちなみにリスク評価には4つあったと思いますが覚えていますか。
私:リスク低減、回避、移転・・・・(保有をど忘れして言葉に詰まる)

B:まぁ、そういう事をベースにリスク対策を考えていくってことですかね。
私:そういうことです、すみませんど忘れしてしまいました・・と合わせる。

B:では時間になりましたので試験を終わります。
私:お礼を述べ、退室。
(試験時間:20分)


感想

  • これまで2回の受験と比べると出来はイマイチ。特に後半は知識の無さを露呈してしまった感じ。社会環境管理の勉強は確かに装備が薄かった。
  • 試験官A・Bともこちらの説明には基本無反応で笑顔なし(ただしA氏については、ここは自分のターンだと意識した際にニヤニヤしながら攻める傾向あり)。こっちとあまり目を合わせようとせず、ちゃんと聞いているのか不安になる感じ。かといって手元の資料に何かメモを書いている素振りもない。
  • 両者とも質問について深堀りされるようなことがなかった。
  • 総じて、手応え全く無し。どう転ぶか分かりません・・でしたが、無事合格しました。

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