自分の技術士口頭試験をふりかえってみる その1:建設部門(道路)の場合

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今年の技術士筆記試験も終わったということで,突如始まりました私の技術士口頭試験報告シリーズ.古い順に3回連続でお送りします.今と面接の項目や時間が若干変わっているので参考になる部分とそうでない部分があるかもしれませんが,とりあえずつづっていきます.では第1回目はH22年度の道路受験時のお話し.読み返してみると,初めての受験だったのでがちがちだなぁ,と・・・


試験日と会場

  • 試験日:2010/12/4
  • 場所:フォーラムエイト

試験官

  • A:国交省キャリア風40代後半。眼鏡をかけていて色白で神経質そうな感じ。無表情で淡々と喋る。多分ハード系。
  • B:国交省キャリア風40代後半。眼鏡をかけていて色黒。配分に詳しい感じだったので多分ソフト系。A氏よりはとっつきやすい感じ。

面接内容

部屋の前の椅子に座っていると,B氏が呼びに来た

B:お入りください,荷物はそちらに。
私:はい,「受験番号+氏名」です。よろしくお願いします。
A:はい,では,お座りください。

(前置きなく,いきなり始まりました。)

A:それでは,経歴と体験論文の略記及び詳述を10分程度で説明してください。
(用意していたものを説明)
(A氏はじっと論文を見つめたまま。B氏はときどきじっと私の顔を覗き込む。身振り手振りを交えながら,語りかけるように喋ったつもりだったが,2人とも論文にマーカーを引くだけで、頷いたりするような反応はなし。)

A:それでは,経歴についてお聞きします。最近はどのような業務を行っていますか?
私:ざっと説明.

A:どのような立場で業務を行っていますか?
私:ざっと説明.

A:受験の動機は?
私:自らの技術力の向上と,技術士になることでより広く深く社会資本整備に携わり,社会貢献がしたい的なことを回答.

A:会社では技術士はどのような役割を担っていますか?
私:プロポへの積極的な参画などなど.

A:それでは体験論文についてお聞きします。これらの業務はどのような体制で行われたのですか?
私:体制を説明.

A:それぞれの業務においてあなたの立場はどのようなものでしたか?
私:立場を説明.ちなみに1つはモビリティマネジメント(TFP)関連,もう1つは経済分析関連の業務を記載しました.

Aまず1つ目の業務ですが、私はTFPというものについて知らないのですが,説明してもらえますか?
私:交通ソフト施策をただ単に試行するだけでなく、住民に対して情報提供等のコミュニケーションを行うことによって自発的に行動変容を促す手法です。

A:こういうTFPって結構やられているものなのですか?
私:全国で広く事例はあります。

A:あ、いや、そうじゃなくて、これってこの都市で以前に実施されたことはなかったのですか?
私:体験論文にも記載しております通り、パイロットスタディ的に行われることはありましたが、本格実施はこの時が初めてです。
(あまり論文には目を通されていなかった模様)

A:提案内容について、TFP実施効果が高い相手に重点的に接触したと記載していますが、なぜ通勤行動に着目したのですか?
私:通勤は日常行動ですので、行動変容の定着を図りやすいものと考えました。また、行動が定着すると継続的な効果が得られるため、今回重点接触対象として設定しました。

A:TFPってTDMと何が違うのですか?
私:TDMはあくまで交通ソフト施策のメニューに留まります。TFPはそのTDMのメニューを住民に対して情報提供し、コミュニケーションを通じてそのメニューを実際に使ってもらうイメージになるかと思います。(自分では「遠からず」な答えだと思ったが、なぜかB氏がしきりに首をかしげていて気になった)

B:では、2つ目の業務についてお聞きします。均衡配分はあなたがやったのですか?
私:はい

B:均衡配分のとっかかりのデータはどのように処理したか教えてください。
私:(よく意味が分からず)すみません,とっかかりと言うのはどういうことでしょうか?

B:普通、配分するときって,時間評価値とか転換率とか設定するじゃないですか,そのあたりはどのように設定したのですか?
私:国が整理していた均衡配分のデータの貸与を受け,それを私の方で統合し計算しています。つまり、ゼロから作成したわけではなく、既存のデータを活用した形になります。ただし、時間評価値につきましては、交通量の再現性向上のために実績ベースで微修正を行っています。(何か的外れな回答な気もしたが、B氏は頷いていた)

A:分割配分法と均衡配分法の違いを教えてください
私:どちらもドライバーの行動理論に基づいて,地区間のどの経路を利用しても所要時間が同じになるように交通量を設定する方法です。いずれも所要時間を計算する際に交通量と速度の関係式を使っているのですが,分割配分法は,簡易な関係式を使っているのに対し,均衡配分では,その関係性を厳密に再現した関係式を使用しています。

A:その関係性は何をもって厳密だと言えるのですか?
私;観測データから交通量と速度の関係性を整理しており,その関係式に近い状態を厳密に再現している,という意味です。

A:ちょっと良く分からないのですが,港湾と道路の整備効果を出しているようですが,これはどうやって計測しているのですか?
私:各地区の生産額を港湾取り扱い分,道路取り扱い分に分け,それぞれ所要時間変化に伴う効果をみています。

A:何かほかにありますか?(体験論文に関する質問が終わりそうな雰囲気でほっとしていたが、この後B氏が立て続けに質問)
B:あ、すみません、ちょっと追加で質問なのですが、この業務は,あくまで道路整備の効果を算出した,ということですよね?
はい

B:この結果をみると,道路整備が必要ということは言えると思うのですが,言い方悪いですが,港湾整備は効果があまり出てなくて必要ないみたいですよね?この結果の図をもって何が言いたいのかちょっとよくわからないのですが教えてくれますか?
私:あくまで現状ベースの結果なので,この地域では現状で陸上物流のシェアが高いことからこのような結果になっています。しかし、港湾物流に関しては、最近のモーダルシフトの動きや東アジアの経済発展等の動向から、今後需要が大きく拡大する可能性があります。今回は将来需要の変化まで捉えた分析まで踏み込めていませんが、本業務は、今後そのような分析につなげていくための第一歩としての位置づけだと捉えていただければよいかと思います。

B:分かりました。あと,港湾と道路の影響を一緒に提示していますよね?道路整備の影響をみるのに,わざわざ港湾の整備効果を一緒に提示すると混乱を招くことはないですか?そのあたりどう思われますか?
私:ここでは、各地区において影響を受けている社会資本整備のあり方は異なる、ということを港湾と道路を並列で評価することで可能にした、ということを表現したかったためこのような表現方法としています。ただし、おっしゃる通り、この資料を今後活用するに当たって混乱を招く可能性はありますので、見せ方には工夫が必要かと思います。例えば「これは、港湾取引分を考慮した値です」と言ったように但し書きをするだけでも良いかと思います。

B:このモデルに関して,今後の課題に書いていらっしゃらないことで何か課題はありますか?
私:先ほど少し触れましたが、将来の経済状況を想定していないので、あくまで現況ベースでの分析に留まっている点が挙げられます。

B:え?でも均衡配分をする際には将来の経済状況ってGDPとかで考慮していますよね?経済モデルでは将来が考慮できていないってどういうことですか?
私:このモデルでは、所要時間算出と経済状況の再現を別々に行っており、所要時間の方はご指摘の通り、均衡配分を使っていますので将来の需要変化を想定して算出しています。しかし、経済状況の方は、将来推計をしようとすると、例えば産業別に将来の付加価値額を推計する必要があったりするので、将来の経済状況を想定するロジックがまだ組むことができていない状況にあります。よって、両モデルが分析時に想定している時点に差異がある、という課題はあります。(B氏納得の表情)

A:(B氏に向かって)時間も限られていますので、もうよろしいですかね?それでは体系的専門知識に関する質問に移ります。道路の役割が2つありますが,何かご存知ですか?
私:通行機能と空間機能です。

A:そうですね。それではそれぞれについて説明してください。
私:通行機能は交通を処理する機能,空間機能は都市空間を形成する機能です。

A:道路がご専門と言うことで、道路構造令については当然ご存知だと思います。道路の区分について説明してください。
私:(構造令くらい当然知ってるよねと言われちょっと焦りつつ)まず,自専道とその他の道路,都市部と地方部という分けで道路の種別が決まります。そして,計画交通量と道路の位置,つまり山地か平地か,という視点で級が決まります。

A:B/Cで取り扱われている便益にはどんなものがありますか?
私:時間短縮,走行経費削減,交通事故削減です。

A:それでは、B/Cについて何が課題だと言われているかご存知ですか?また、一般にどんな対応策が必要だと言われていますか?
私:特に中山間地域では計画交通量が見込めない路線が多く,通常の3便益では過小評価になると言われています。そのため、例えば冬季の速度低下や迂回軽減など,地域の実情に合った便益算定が必要とされています(当時は追加便益が流行ってました)。

A:それだけですか?他にはないですか?
私:あとは、B/Cはあくまで道路利用者への便益をもとに投資効率を計るロジックとなっていますので、地域にとっての必要性という観点では不十分です。体験論文に掲載した例のように,地域にとっての必要性についても定量化し,評価の際に参考にすべきだと思います。

A:最近、社会資本が老朽化していますが,財源もひっ迫している状況だと言われていますが、どういう方策が重要だと考えますか?キーワードって何だと思いますか?
私:ライフサイクルコストの低下がキーワードになると思います。老朽化のタイミングを見計らって長寿命化等の施策を打っていくことが重要になると思います。

(ちなみに、私はこの質問までは割と流暢に喋っていたが、この質問以降、探り探りの喋り方に変わる)

A:ん?タイミング?タイミングって何ですか?
私:えっと・・・点検等を行いまして・・・大規模な崩壊が起こる前のタイミングでしかるべき対応を行うということです(しどろもどろ)。

A;私の考えとしては・・・(アセットマネジメントの説明を始めるA氏)・・・というアプローチがいいのではないかと思います。これは,アセットマネジメントと言いますので,勉強しておいた方がいいと思いますよ。(ここで自分が「アセットマネジメント」というキーワードを言うのを忘れていたことに気づく…)
私:はい、ありがとうございます。勉強させていただきます。

A:老朽化に関連して次の質問ですが、一般に橋梁が老朽化していると言われていますが,実は道路橋に関しては,耐震補強が進んでいます。道路に関連して耐震性が不十分だと言われている部位について何かご存知ですか?
私:…すみません,存じておりません。今後勉強したいと思います。

A:一般に,盛土だと言われています。それでは,耐震性が低いのになぜ盛土がつかわれるか知っていますか?
私:(もう完全にテンパる)すみません,把握しておりません。

A:ま、要は安いからですよね。これってこの間の駿河湾の地震でも問題になったと思いますよ。とくに水に関しては…(A氏から30秒ほど盛土のレクを受ける…)
私:はい、帰って勉強したいと思います。

B:渋滞対策としてどのようなものがあるか,ハード・ソフトそれぞれ教えてください。
私:(完全にテンパってなぜか事故対策の説明を始めてしまう)

B:ん?渋滞対策ですよ?
私:あ!あぁぁ,すみません。渋滞については,ハードについてはバイパス整備による容量拡大,ソフトについてはTDMやMMなどが挙げられます。(B氏苦笑い)

A:それでは倫理に関する質問です。技術士倫理が規定されていますが,どのようなものがあるかご存知ですか?
私:3義務2責務のことでよろしいですか?

A:それでいいです。
私:信用失墜行為の禁止,秘密保持の義務,名称表示の場合の義務,公益確保の責務,資質向上の責務です。

A:信用失墜行為の禁止とは何ですか?
私:技術士や技術士の名称を汚してはいけないということです。例えば,データのねつ造や犯罪行為が該当します。

A:公益と会社の利益が異なることはありましたか?
私:今までは,ありません。

A:もしそうなったら,どうしますか?もちろん公益確保が重要なのは当然として。
私:内部で話し合いを重ね,十分に調整しますが,どうしても公益に反する場合は,しかるべき機関に相談します。

A:(軽くニヤニヤしながら)え?しかるべき機関って何ですか?
私:例えば,弁護士等の公的機関になると思います。

A:あ、すみません、そう言えば聞くのを忘れていたのですが、今まで業務を行われる中で、失敗した事例はありますか?あれば,その原因とその後の対策案も教えてください。もちろん、差支えない範囲で結構です。
私:ある業務で道路整備効果を算出したのですが,その際にエクセルの参照を間違え,指標にミスがあったことがあります。当時は数値を算出することが主目的になってしまっており,その数値の計算過程やアウトプットイメージがつかめていませんでした。以来,チェック体制の強化だけでなく計算過程とアウトプットのイメージについては意識して行うようにしています。
(何故か最後に業務経験についてもう一度聞かれた。点数が足りてなかったのだろうか?)

A:(B氏に向かって)他に何かありますか?
B:(首を横に振る)
A:それでは以上で面接を終わります。お疲れ様でした。
私:ありがとうございました。よろしくお願いいたします。(これは落ちたかも…)


感想

  • 面接時間30分ちょっとでした。今年は35分程度だったケースが多かったらしいですがそれにしても短かったような気がします。終わった瞬間は、落ちた気満々でしたので、絶対何か地雷を踏んだから早く終わったんだろうなーと思ってました。
  • 私の回答に対して、B氏は首を振るなどの反応がありましたが(それでもほんのちょっとですが),A氏は一点を見つめたまま全く無反応でした。
  • 体験論文までは割とすんなり進みました。
  • 体系的専門知識は道路と言うより、建設一般をつっこまれました。勉強不足で全然答えられずで、その尾を引いて倫理も相当しどろもどろでした。
  • 受かったのが未だに信じられないですが、変に知ったかぶりをせず、謙虚にしていたのが良かったのか、計画部分がそれなりに答えられたのが良かったのか・・・
  • ちなみに、うちの会社の他の道路分野の受験者は、全員1月中旬が試験日だったのに私だけ何故か12月頭でした。正月挟まなかったのでモチベーションが下がらなかったのは良かったですが、準備不足は否めませんでした。試験官もプロなので、付け焼刃で臨むとすぐに折られますので、普段からの継続学習が大事だと思います。当たり前ですが。

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